DALL-E 3の革新的な機能と、その前モデルDALL-E 2からの進化点を詳しく解説します。ChatGPTとの統合による対話型の画像生成、プロンプトへの驚異的な忠実性、テキスト描画能力の向上など、DALL-E 3の主要な特徴を学びましょう。さらに、ChatGPT PlusやMicrosoft Copilotでの具体的な使い方から、高品質な画像を生成するためのプロンプトテクニック、著作権や商用利用のルールまで、DALL-E 3を使いこなすための情報を網羅的に紹介します。
1. DALL-E 3とは?AI画像生成の最前線
DALL-E 3の基本的な概要と、AI画像生成における位置づけを解説します。
1-1. DALL-E 2からの進化点
DALL-E 3は、前モデルであるDALL-E 2から飛躍的な進化を遂げました。単なる画質の向上だけでなく、AIとの対話を通じて画像を生成するという、全く新しい体験を提供します。主な進化点は以下の通りです。
プロンプト(指示文)理解能力の飛躍的な向上
DALL-E 3における最大の進化は、ユーザーの指示を理解する能力が格段に向上した点です。これは、大規模言語モデルであるChatGPTとネイティブに統合されたことによる恩恵です。
- DALL-E 2: 特定のキーワードを効果的に並べる、いわゆる「呪文」のようなテクニックが必要で、複雑な構図や文脈を正確に反映させることが困難な場合がありました。
- DALL-E 3: 日常会話で使うような自然な文章で、長く詳細な指示を出しても、そのニュアンスを驚くほど正確に汲み取ります。「誰が」「何を」「どこで」「どのように」といった要素を的確に配置し、ユーザーが思い描いた通りの情景を生成する能力が大幅に向上しました。
生成される画像の品質と一貫性の向上
DALL-E 2でも高品質な画像は生成できましたが、DALL-E 3ではその品質がさらに向上し、特にこれまで画像生成AIが苦手としてきた点の多くが改善されています。
- 手や指の描写: DALL-E 2では不自然になりがちだった人物の手や指の描写が、より自然で正確になりました。
- 文字の描写: 画像内に意味のあるテキストを正確に描き出す能力が向上し、ロゴや看板、メッセージ入りのイラストなどの作成が容易になりました。
- 全体的な一貫性: プロンプトに含まれる複数の要素を、破綻なく一枚の絵としてまとめる能力が高まり、より説得力のあるビジュアルを生成できます。
安全性と倫理的配慮の強化
OpenAIはDALL-E 3において、より強力な安全対策を導入しました。暴力的な表現、成人向けコンテンツ、ヘイトイメージなどの有害なコンテンツの生成を制限する機能が強化されています。また、著名人の画像を生成するリクエストを拒否したり、存命のアーティストの画風を模倣するよう求めるプロンプトをブロックしたりするなど、倫理や著作権への配慮もより厳格になっています。
これらの進化により、DALL-E 3は専門的な知識がないユーザーでも、アイデアをより簡単かつ忠実にビジュアル化できる、強力で身近なクリエイティブツールとなりました。
1-2. ChatGPTとの統合がもたらす革命
DALL-E 3が画期的なツールとされる最大の理由は、単なる画像生成AIとしてではなく、対話型AIであるChatGPTと深く統合された点にあります。この統合は、画像生成のプロセスを根本から変え、専門的な「命令(プロンプト)」から、誰でも参加できる「対話(カンバセーション)」へと進化させました。まさに、クリエイティブな作業における革命と言えるでしょう。
プロンプトエンジニアリングの民主化:アイデアを伝えるだけでOK
従来、高品質な画像を生成するには、AIが理解しやすいようにキーワードを並べた「呪文」のようなプロンプトを作成するスキルが必要でした。しかし、DALL-E 3ではその必要がありません。
ユーザーは「サイバーパンクな東京の街を歩く猫の侍」といった漠然としたアイデアを自然な文章で伝えるだけです。すると、ChatGPTがその意図を汲み取り、画像のクオリティを引き出すための詳細で効果的なプロンプトを自動で生成してくれます。まるで、優秀なアートディレクターが隣にいて、アイデアを具体化する手伝いをしてくれるような体験です。
対話を通じた継続的な改善:試行錯誤が容易に
ChatGPTとの統合は、一度画像を生成して終わり、ではありません。生成された画像を見ながら、対話を通じて修正やバリエーションの追加を簡単に行えます。
例えば、「この猫をもっと大きくして」「背景を夜から夕暮れに変えてほしい」「違うアングルからの絵も見てみたい」といった追加の要望を投げかけるだけで、ChatGPTは文脈を理解し、プロンプトを修正して新しい画像を生成します。この繰り返しにより、ユーザーは最終的なイメージへと直感的に近づけていくことができます。
AIとの共創:思いがけないインスピレーションの獲得
ChatGPTは、単にユーザーの指示を聞くだけの存在ではありません。時には、より良い作品にするためのクリエイティブな提案も行います。「4つの異なる画風でこのシーンを描いてみて」と頼めば、ピクセルアート風、水彩画風、アニメ風など、自分では思いつかなかったような表現の可能性を提示してくれます。このように、AIが創造的なパートナーとして機能することで、ユーザーのインスピレーションを刺激し、表現の幅を大きく広げてくれるのです。
ChatGPTとの統合は、DALL-E 3を単なる「画像生成ツール」から「対話を通じてビジョンを共創するパートナー」へと昇華させました。専門知識の壁を取り払い、誰もが頭の中のイメージを簡単に、そしてより豊かに探求できるようになったことこそ、DALL-E 3がもたらした最大の革命と言えます。
2. DALL-E 3の主な特徴
DALL-E 3が持つ、他の画像生成AIとは一線を画す優れた機能を3つのポイントで紹介します。
2-1. 驚異的な言語理解能力とプロンプトへの忠実性
DALL-E 3がこれまでの画像生成AIと一線を画す最大の特長は、その驚異的な言語理解能力と、それによって実現されるプロンプト(指示文)への忠実性です。
従来の画像生成AIでは、「赤い帽子をかぶり、青い本を読んでいる猫」といった少し複雑な指示を出すと、「赤い本」や「青い帽子」が生成されたり、要素がバラバラに配置されたりすることが頻繁にありました。これは、AIが単語をキーワードとして捉えるだけで、文章全体の構造や要素間の関係性を正確に理解するのが苦手だったためです。
しかし、DALL-E 3は、対話型AIであるChatGPTの技術を基盤として開発されており、人間が使う自然言語のニュアンスや文脈を深く理解する能力を持っています。これにより、以下のような複雑な指示も的確に解釈し、画像に反映させることが可能になりました。
- 詳細な状況設定: 「夕暮れの光が差し込む静かな図書館で、アンティークな木製の机に座り、積み上げられた本の隣で眠っている猫」
- 正確な位置関係の指定: 「画像の左側には太陽が、右側には月が浮かんでいるシュールな風景」
- 特定のスタイルや画風の模倣: 「ゴッホの画風で描かれた、サイバーパンクな東京の夜景」
このように、DALL-E 3はユーザーが頭の中に思い描いた具体的なイメージを、まるで言葉をそのまま絵にしたかのように忠実に再現します。この「指示した通りに描いてくれる」という高いプロンプト忠実性こそが、DALL-E 3を単なる画像生成ツールから、クリエイティブな発想を具現化するための強力なパートナーへと昇華させているのです。
2-2. 対話形式での画像生成と修正
DALL-E 3のもう一つの画期的な特徴は、ChatGPTとの統合によって実現された「対話形式での画像生成と修正」機能です。これは、ユーザーがAIと会話をしながら、アイデアを練り、画像を段階的に完成させていくことを可能にします。
従来の画像生成AIでは、一度生成された画像に修正を加えたい場合、ユーザーはプロンプトを一から書き直したり、複雑なパラメータを調整したりする必要がありました。しかしDALL-E 3では、まるで人間のアシスタントに指示を出すかのように、自然な言葉で修正を依頼できます。
例えば、最初に「宇宙を旅する猫のイラスト」を生成したとします。その結果に対して、以下のような対話を通じた改善が可能です。
- ユーザー: 「この猫にヘルメットをかぶせて」
- ユーザー: 「背景の星をもっとキラキラさせてほしい」
- ユーザー: 「もっとアニメ風のタッチにならないかな?」
- ユーザー: 「この画像の縦横比を16:9に変更して」
DALL-E 3はこれらの追加の指示や要望を文脈から理解し、新しい画像を生成します。このプロセスは、単なる修正作業にとどまりません。ユーザーが「もっと面白いアイデアはない?」と問いかければ、ChatGPTが「では、猫が乗っている宇宙船を魚の形にするのはどうでしょう?」といった創造的な提案をしてくれることもあります。
このように、曖昧なイメージから出発し、AIとの対話を通じてアイデアを具体化し、試行錯誤を繰り返しながら理想のビジュアルへと近づけていけるのです。この対話機能により、DALL-E 3は専門的な知識がない人でも直感的に使いこなせる、親しみやすいツールとなっています。
2-3. テキスト(文字)描画の精度向上
これまでの画像生成AIにとって、画像内に意図した通りの文字を描くことは、最も苦手なタスクの一つでした。「CAFE」と書かれた看板を生成しようとしても、「CFEA」のような意味不明な文字列になったり、そもそも文字として認識できないような図形が描かれたりすることが日常茶飯事だったのです。
しかし、DALL-E 3はこの弱点を大幅に克服し、テキスト描画能力を飛躍的に向上させました。プロンプト内で引用符(” “)などを使ってテキストを指定することで、スペルミスや文字化けの少ない、読みやすいテキストを画像内に含めることが可能になったのです。
例えば、以下のような指示にも対応できます。
- 「”Happy Birthday!”と書かれたメッセージカード」
- 「本の表紙に”Adventures in AI”というタイトルが書かれているイラスト」
- 「”OPEN”とネオンサインで書かれたレトロなカフェの外観」
DALL-E 3は、これらの指示に含まれる単語を、意味を持つ「テキスト」として正確に認識し、画像内の適切な場所に自然な形で配置します。
この機能向上は、デザインやコンテンツ制作の現場に大きなインパクトを与えます。これまで手動での修正が必須だったロゴデザインの草案、ポスター、SNS用の告知画像、漫画のセリフや効果音などを、AIで一貫して生成できる可能性が広がりました。
もちろん、非常に長い文章や複雑なフォントの再現にはまだ課題が残る場合もありますが、短い単語やフレーズであれば十分に実用的なレベルに達しています。このテキスト描画能力の向上は、DALL-E 3が単なるイラスト生成ツールではなく、より幅広いデザインタスクに対応できる実用的なツールへと進化したことを示す象徴的な機能と言えるでしょう。
3. DALL-E 3の始め方と使い方
DALL-E 3を実際に利用するための具体的な方法を、主要なサービスごとにステップバイステップで解説します。
3-1. ChatGPT Plusでの利用方法
DALL-E 3の最も手軽な利用方法の一つが、有料プランである「ChatGPT Plus」を経由する方法です。特別なアプリケーションをインストールする必要はなく、普段使っているChatGPTのチャット画面から、対話形式で直感的に画像を生成できます。
以下に、具体的な利用手順を解説します。
- ChatGPTにログイン
まずはChatGPTの公式サイトにアクセスし、有料プラン(Plus, Team, Enterprise)に登録しているアカウントでログインします。 - 画像生成をリクエストする
チャットの入力欄に、生成したい画像の内容を日本語で入力します。これを「プロンプト」と呼びます。いつものようにChatGPTに話しかける感覚で、「〜の画像を生成してください」「〜を描いて」といった形式で依頼するだけです。
GPT-4モデルが文脈を判断し、画像生成が必要なリクエストだと認識すると、自動的にDALL-E 3を呼び出してくれます。
プロンプトの例:- 「サイバーパンクなネオン街を歩く、探偵姿の猫の画像を生成してください。」
- 「水彩画風で、雨上がりの紫陽花が咲く庭を描いて。」
- 「空飛ぶ車が行き交う未来の東京の風景、写真のようなリアルなスタイルで。」
- 画像の生成と確認
プロンプトを送信すると、ChatGPTがDALL-E 3を使って画像の生成を開始します。通常、数十秒から1分程度で画像がチャット上に表示されます。 - 修正や調整を依頼する
生成された画像がイメージと少し違う場合は、続けてチャットで修正を依頼できます。これもDALL-E 3とChatGPTの連携による大きなメリットです。
修正依頼の例:- 「もっと猫を大きくしてください。」
- 「背景を夜から夕方に変更して。」
- 「青色を基調としたデザインに変えてください。」
このように、ChatGPT Plusを使えば、専門的な知識がなくても、まるで人と会話するようにアイデアを伝え、修正を重ねながら、思い通りの画像を簡単に作成することが可能です。生成された画像は、クリックして拡大表示し、ダウンロードボタンから手軽に保存できます。
3-2. Microsoft Copilot (旧Bing Image Creator)での利用方法
DALL-E 3は、Microsoftが提供するAIアシスタント「Microsoft Copilot」(旧称:Bing Image Creator)でも利用できます。ChatGPT Plusが有料であるのに対し、こちらはMicrosoftアカウントがあれば無料で利用できるのが最大の魅力です。
Web検索エンジンに統合されているため、情報収集のついでに画像生成を試すといった使い方も可能です。
以下に、具体的な利用手順を解説します。
- Microsoft Copilotにアクセス
WebブラウザでMicrosoft Copilotの公式サイトにアクセスし、お持ちのMicrosoftアカウントでサインインします。 - 画像生成をリクエストする
ChatGPTと同様に、チャットの入力欄に生成したい画像の内容を「〜の画像を生成して」「〜を描いて」といった形式で入力します。
プロンプトの例:- 「印象派の絵画スタイルで、満開の桜並木を描いてください。」
- 「ロゴデザインのアイデア。コーヒー豆と本を組み合わせた、ミニマルなスタイルで。」
- 「3Dアート風、ガラスでできた透明なチェスの駒。」
- 画像の生成と確認
プロンプトを送信すると、DALL-E 3による画像生成が始まります。Copilotでは通常、一度に4つの異なるバリエーションの画像が提案されるため、イメージに近いものを選択しやすいのが特徴です。 - 画像の保存
気に入った画像をクリックして拡大表示し、ダウンロードボタンから保存します。
Microsoft Copilotでの画像生成には、「ブースト」と呼ばれるクレジットが消費されます。このブーストを使うと画像を高速で生成できますが、使い切っても生成速度が遅くなるだけで、引き続き無料で画像を生成することが可能です。ブーストは定期的に補充されます。
ChatGPT Plusほどの高度な対話による修正は得意ではありませんが、無料で手軽にDALL-E 3のパワフルな画像生成能力を体験したい方にとっては、最適な選択肢と言えるでしょう。
4. DALL-E 3で高品質な画像を生成するコツ
思い通りの画像を生成するために、知っておくと便利なプロンプトの作り方やテクニックを紹介します。
4-1. 具体的で詳細なプロンプトを作成する
DALL-E 3の最も優れた特徴の一つは、自然言語の理解能力が非常に高いことです。つまり、私たちが普段使うような話し言葉に近い、具体的で詳細な指示(プロンプト)を与えるほど、思い描いたイメージに近い画像を生成してくれます。曖昧な指示よりも、情景が目に浮かぶような詳細な文章を心がけることが、DALL-E 3を使いこなすための最初の、そして最も重要なステップです。
例えば、「犬の絵」とだけ入力すると、どのような犬種で、どのような背景の、どのようなスタイルの絵が出てくるかはAI任せになってしまいます。しかし、次のようにプロンプトを詳細にすることで、AIの解釈の幅を狭め、より意図に近い画像を生成させることができます。
プロンプトに含めるべき要素の例
- 主題(Subject): 画像の主役は何か。「笑顔でこちらを見ている柴犬」
- 背景(Background/Setting): 主役はどこにいるのか。「満開の桜並木の下にある公園のベンチの上」
- 構図(Composition): どのようなアングルや配置か。「クローズアップで、背景は少しぼかす」
- スタイル(Style): どのような画風か。「柔らかいタッチの水彩画風」「写真のようにリアルなスタイル」
- 雰囲気(Mood/Atmosphere): 全体のムードはどうか。「春の暖かい日差しが差し込む、穏やかで幸せな雰囲気」
- 色調(Color): 全体の色合いはどうか。「パステルカラーを基調とした明るい色使い」
これらの要素を組み合わせることで、単なる「犬の絵」から、非常に具体的で質の高いプロンプトを作成できます。
プロンプトの比較例
悪い例:
猫
良い例:
銀色の毛並みを持つサイボーグの猫が、ネオンの看板が輝く未来都市の雨に濡れた路地裏に座っている。その目は青く光り、地面の水たまりに自分の姿が映り込んでいる。サイバーパンクスタイルで、クールな青と紫の色調。
このように、物語の一場面を説明するようにプロンプトを作成することで、DALL-E 3はその文脈や細かなニュアンスを読み取り、驚くほど精巧で独創的な画像を生成してくれます。まずは、頭の中にあるイメージをできるだけ多くの言葉で描写する練習から始めてみましょう。
4-2. ChatGPTにプロンプトのアイデアを出してもらう
「4-1. 具体的で詳細なプロンプトを作成する」で解説したように、詳細な指示が重要であることは理解できても、「そもそも、どんな要素を盛り込めばいいのか思いつかない…」と感じる方も少なくないでしょう。そんな時に非常に強力な助けとなるのが、DALL-E 3が統合されているChatGPT自身にアイデアを出してもらうという方法です。
ChatGPTは、単に指示通りに画像を生成するだけのツールではありません。優れた言語モデルとして、私たちの漠然としたイメージを具体的な言葉に変換し、創造性を刺激する「クリエイティブパートナー」としての役割も果たしてくれます。アイデア出しに詰まったら、チャットで相談するようにChatGPTに話しかけてみましょう。
ChatGPTへの相談例
- 漠然としたテーマからプロンプトを複数提案してもらう
「これからDALL-E 3で画像を作りたいです。『サイバーパンクな京都』というテーマで、雰囲気の違うプロンプトのアイデアを4つ提案してください。」
このように依頼すれば、ChatGPTは「ネオン輝く五重塔」や「着物姿のアンドロイドが歩く祇園」といった、具体的なシーンを切り取ったプロンプトを複数作成してくれます。 - キーワードを元に物語性のあるプロンプトを作成してもらう
「『猫』『宇宙』『図書館』という3つのキーワードを使って、物語性を感じるような詳細なプロンプトを作ってください。スタイルは幻想的な油絵風でお願いします。」
この指示により、自分一人では思いつかなかったような、独創的で魅力的なプロンプトが手に入ります。 - 生成したプロンプトをさらに洗練させる
「先ほど作ってくれたプロンプトは素晴らしいですが、もっと『静かで、少し寂しい雰囲気』を強調したいです。そのようにプロンプトを修正してください。」
一度生成したプロンプトをベースに、対話を重ねて理想のイメージに近づけていくことも可能です。
このように、ChatGPTをアイデアの壁打ち相手として活用することで、プロンプト作成のハードルは一気に下がります。完璧なプロンプトを最初から自分で考える必要はありません。まずは頭の中にあるぼんやりとしたイメージや好きなキーワードをChatGPTに投げかけ、そこから対話を通じてアイデアを膨ませていくという使い方をぜひ試してみてください。
4-3. 生成画像の「Seed値」を活用した応用テクニック
プロンプトを工夫することで、生成される画像の方向性をコントロールする方法をこれまで解説してきました。しかし、一度素晴らしい画像が生成されても、「このキャラクターの表情だけ変えたい」「この構図のまま背景だけ夜にしてみたい」と思っても、同じプロンプトで再生成すると全く違う画像が出てきてしまい、がっかりした経験はないでしょうか。
この「再現性」の問題を解決し、画像の微調整や一貫性の維持を可能にするのが、「Seed値(シード値)」を活用する応用テクニックです。
Seed値とは?
Seed値とは、画像を生成する際の乱数の初期値のことです。AIは画像生成プロセスにおいて、このSeed値を元にランダムなノイズを発生させ、そこからプロンプトに従って徐々に画像を形作っていきます。
つまり、プロンプトとSeed値の組み合わせが同じであれば、理論上は非常に近い、あるいは全く同じ画像が生成されることになります。このSeed値は、例えるなら「画像の設計図のシリアルナンバー」のようなものだと考えると分かりやすいでしょう。
Seed値の確認と活用方法
ChatGPT内のDALL-E 3で画像を生成した後、その画像のSeed値を知るには、チャットで直接質問するだけです。
1. Seed値を確認する
画像を生成した後、次のように質問します。
今、生成した画像のSeed値を教えてください。
すると、ChatGPTは「この画像のSeed値は 1234567890 です。」のように数字を返してくれます。
2. Seed値を固定して画像を再生成する
次に、このSeed値を使って画像のバリエーションを作成したり、微調整を行ったりします。プロンプトの中にSeed値を含めることで、AIに「この設計図をベースにしてね」と指示することができます。
活用例1:キャラクターの一貫性を保つ
同じキャラクターを、異なるシチュエーションで描きたい場合に非常に有効です。
- 元のプロンプト:
金色の瞳を持つ白髪の若い女性剣士、革の鎧を身に着けている。アニメスタイル。
(生成後、Seed値が1234567890であることを確認)
- 応用プロンプト:
金色の瞳を持つ白髪の若い女性剣士、革の鎧を身に着けている。満月の下の城壁の上で剣を構えている。アニメスタイル。gen_idはXXXX、Seed値は 1234567890 でお願いします。
※ gen_id はDALL-E 3が内部で使うIDで、Seed値と合わせて指定すると再現性が高まることがあります。これもSeed値と同様にChatGPTに質問して確認できます。
こうすることで、顔立ちや服装といったキャラクターの特徴を維持したまま、背景やポーズだけを変更しやすくなります。
活用例2:構図を維持したまま微調整する
生成された画像の構図は気に入っているけれど、細部だけ変更したいというケースで役立ちます。
- 元のプロンプト:
机の上に置かれた一杯のコーヒーと一冊の開かれた本。窓から朝日が差し込んでいる。温かみのある写真。Seed: 1234567890
- 応用プロンプト:
机の上に置かれた一杯の湯気が立つコーヒーと一冊の開かれた本。窓から朝日が差し込んでいる。温かみのある写真。Seed: 1234567890
Seed値を固定することで、全体の構図や雰囲気を大きく変えることなく、「湯気」のような細かな要素を追加・変更する試みができます。
このSeed値を活用するテクニックは、少し専門的に聞こえるかもしれませんが、一度覚えてしまえば画像生成の自由度を格段に高めてくれます。「偶然の産物」に頼るだけでなく、意図を持って画像を改善し、シリーズ展開していくための強力な武器となりますので、ぜひマスターしてみてください。
5. DALL-E 3を利用する上での注意点
DALL-E 3を使う際に知っておくべき、著作権や商用利用、コンテンツポリシーに関するルールを解説します。
5-1. 著作権と商用利用のルール
DALL-E 3で生成した画像の利用を検討する際、最も気になるのが著作権と商用利用に関するルールです。結論から言うと、DALL-E 3は生成した画像の商用利用を認めており、クリエイターやビジネスにとって非常に活用しやすいツールとなっています。
OpenAIの利用規約によると、ユーザーが利用規約およびコンテンツポリシーを遵守して生成した画像に関するすべての権利(所有権)は、ユーザー自身に譲渡されます。これにより、ユーザーは生成した画像をブログ記事のアイキャッチ画像、SNS投稿、広告、商品パッケージ、プレゼンテーション資料など、個人的な利用から商用利用まで幅広い目的で自由に使用することが可能です。
ただし、この自由な利用にはいくつかの重要な注意点が存在します。
- コンテンツポリシーの遵守:
OpenAIは、暴力的、差別的、成人向けコンテンツなど、社会的に有害と見なされる画像の生成を禁止しています。ポリシーに違反した場合、サービスの利用が停止される可能性があります。 - 第三者の権利侵害の禁止:
生成した画像の権利はユーザーにありますが、その画像が第三者の著作権、商標権、肖像権などを侵害していないことを確認する責任もユーザーにあります。例えば、実在する有名なキャラクターやブランドロゴ、特定の人物に酷似した画像を無断で生成し商用利用した場合、権利侵害として問題になるリスクがあります。DALL-E 3には、このようなリスクを低減するため、著名人の名前や特定のアーティストの作風を模倣するようなプロンプトを拒否する安全機能が備わっています。 - 利用規約の変更:
AIに関するルールや法律は常に変化しています。OpenAIの利用規約も将来変更される可能性があるため、重要な用途で利用する際は、常に最新の公式情報を確認することが推奨されます。
まとめると、DALL-E 3はルールを守れば商用利用も可能な強力なツールです。しかし、その利用には、生成者としての責任が伴うことを理解し、常に倫理的かつ法的な観点を忘れないようにしましょう。
5-2. コンテンツポリシーと生成できない画像
DALL-E 3は、誰でも安全に創造性を発揮できるツールであることを目指しており、そのために厳格なコンテンツポリシーを設けています。このポリシーは、AI技術の悪用を防ぎ、倫理的で社会的に責任ある利用を促進するためのものです。前のセクションで触れたように、このポリシーに違反する画像の生成は禁止されています。
具体的に、DALL-E 3では以下のようなカテゴリに該当する画像の生成ができません。
- ヘイトスピーチや差別的なコンテンツ:
人種、民族、宗教、国籍、性的指向、性自認、障害など、特定の集団に対する憎悪や差別、暴力を助長するような画像は生成できません。 - 暴力的・残虐なコンテンツ:
過度に暴力的、グロテスクな描写や、自傷行為、自殺といったテーマを美化したり助長したりするコンテンツは固く禁じられています。 - 性的・成人向けコンテンツ:
ポルノグラフィや性的に露骨な表現、ヌードなど、成人向けのコンテンツは生成できません。特に、未成年者を含む性的な画像の生成は最も厳しく禁止されています。 - 違法行為や危険な活動の助長:
違法薬物の使用、武器の製造、テロ行為、詐欺など、非合法な活動や危険な行為を描写・推奨するような画像の生成は拒否されます。 - 偽情報(ディープフェイクなど):
実在の人物、特に公人や著名人の顔を使用して、誤解を招くような偽の画像(ディープフェイク)を作成することは制限されています。これは、政治的な偽情報の拡散や個人の名誉毀損を防ぐためです。 - 著名人や特定のアーティストのスタイルの模倣:
肖像権やプライバシーを保護するため、著名人の名前を直接プロンプトに含めて画像を生成することはできません。同様に、著作権保護の観点から「(特定のアーティスト名)のスタイルで」といった、存命のアーティストの作風を意図的に模倣するような指示もブロックされるようになっています。
これらのポリシーに違反するプロンプトを入力した場合、DALL-E 3は警告メッセージを表示したり、画像の生成を拒否したりします。繰り返し違反するとアカウントが停止される可能性もあるため、ユーザーはこれらのルールを理解し、遵守することが求められます。これらの制限は、DALL-E 3が社会に悪影響を与えることなく、創造的なツールとして活用されるための重要な仕組みと言えるでしょう。


