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1. 二級建築士試験の全体像と合格へのロードマップ
二級建築士試験がどのような試験なのか、合格までに何をすべきかの全体像を解説します。
1-1. 学科試験と設計製図試験の特徴
学科試験:幅広く正確な「知識」が問われる
学科試験は、建築士として備えておくべき基礎的な知識を問う、マークシート方式(五肢択一式)の試験です。以下の4つの科目から出題されます。
- 建築計画: 快適で機能的な建築空間を計画するための知識
- 建築法規: 建築基準法をはじめとする関連法規の知識
- 建築構造: 安全な建物を実現するための構造力学や各種構造に関する知識
- 建築施工: 建築物を実際に造るための工事や材料に関する知識
この試験の大きな特徴は、出題範囲が非常に広いこと、そして各科目に「足切り点」が設定されていることです。全体の合計点数が合格基準に達していても、どれか1科目でも足切り点を下回ると不合格となってしまいます。そのため、苦手科目を作らず、すべての分野をバランスよく学習することが不可欠です。
4科目の合計点数が合格ラインを越えていても、どれか1科目でも足切り点数に引っ掛かってしまうと合格できません。
設計製図試験:知識を応用する「実践力」が問われる
設計製図試験は、与えられた課題(設計条件と作図条件)に対してエスキスを行ない建築図面を完成させる実技試験です。
フランス語で「素描」や「下絵」を意味し、制作における構想を練るための初期段階のスケッチや下描きのことですが、この試験においては、設計条件に対してプランを考えることを言います。
毎年6月に「木造2階建て専用住宅」といった課題のテーマが発表され、試験当日に敷地条件や要求事項が提示されます。受験者は制限時間(5時間)内に、エスキスから始め、要求された図面(配置図、各階平面図、立面図、矩計図など)をすべて描き上げなければなりません。
この試験では、単に図面を描くだけでなく、以下の点が総合的に評価されます。
設計条件の遵守: 要求された部屋や面積などを満たしているか
法規への適合: 建蔽率や容積率、斜線制限などをクリアしているか
計画の妥当性: 動線や部屋の配置などが考慮された合理的なプランか
図面の表現力: 図面として必要な情報が正確かつ分かりやすく表現されているか
制限時間内に膨大な作業をこなす必要があり、時間配分と作図スピードが合否を大きく左右します。また、図面の未完成や重大な設計ミスは、一発で不合格(ランクⅣ)となる可能性がある厳しい試験です。
このように、学科試験と設計製図試験は全く性質の異なる試験です。まずは知識のインプットが中心となる学科試験の突破に全力を注ぎ、その後、実践的なアウトプット能力を鍛える設計製図試験の対策へと進むのが一般的な学習ステップとなります。
1-2. 合格に必要な勉強時間とスケジュールの立て方
二級建築士試験は、長期にわたる計画的な学習が合格の鍵を握ります。やみくもに勉強を始めるのではなく、まず合格までに必要な総勉強時間を把握し、そこから逆算して自分に合ったスケジュールを立てることが重要です。
合格に必要な勉強時間の目安
二級建築士試験の合格に必要な勉強時間は、個人の知識や実務経験によって大きく異なりますが、一般的に合計で500時間~1000時間程度が目安と言われています。
学科試験: 300~700時間
設計製図試験: 200~300時間
例えば、毎日2時間勉強するとしても、半年から1年以上の期間が必要になる計算です。特に建築初学者の方や、仕事で関連業務に携わっていない場合は、1000時間以上を見込んでおくと良いでしょう。
重要なのは、この時間を確保するために「いつから勉強を始めるか」を具体的に決めることです。学科試験が7月上旬、設計製図試験が9月中旬に行われることを念頭に置き、余裕を持った学習計画をスタートさせましょう。
平日に2時間、土日祝日に6時間行なった場合、1か月で約100時間となります。
半年で600時間です。
学習スケジュールのモデルプラン
試験日から逆算して、学習期間を大きく3つのフェーズに分けると計画が立てやすくなります。
【第1フェーズ】学習開始~4月頃:インプット・基礎固め期
この時期は、4科目すべての基礎知識をインプットすることに集中します。特に、理解に時間がかかる「建築法規」と「建築構造(力学)」を優先的に進めるのがおすすめです。
まずは参考書やテキストを一通り読み、試験の全体像を掴む。
各科目の基本事項を丁寧に理解し、簡単な練習問題を解いて知識の定着を図る。
この段階で苦手分野を把握し、重点的に学習する計画を立てる。
【第2フェーズ】5月~学科試験直前:アウトプット・実践力養成期
基礎知識がある程度身についたら、過去問演習を中心としたアウトプット学習に切り替えます。
過去問題を繰り返し解く: 最低でも過去5~7年分を3周以上解き、出題傾向や時間配分を身体で覚える。
間違えた問題の復習: なぜ間違えたのかを徹底的に分析し、該当するテキストの範囲を読み返す。弱点を確実に潰していくことが得点力アップに繋がります。
模擬試験の活用: 本番同様の環境で模擬試験を受け、現在の実力と課題を把握する。
合格点数は調整が入る場合もありますが、概ね合計60点、各科目の足切り点数が13点となっています。
【第3フェーズ】学科試験後~設計製図試験:製図対策集中期
学科試験の自己採点を終えたら、すぐに設計製図試験の対策に頭を切り替えましょう。ここからの約2ヶ月間が勝負です。
エスキスの習得: 設計課題の要求を正確に読み取り、法規や構造のルールを守りながらプランをまとめる練習を繰り返す。
作図スピードの向上: 制限時間内にすべての図面を完成させるため、時間を計りながらひたすら作図練習を行なう。週に1枚は描き上げるペースを目標にする。
課題のポイント整理: 過去の課題や資格学校の予想課題などを参考に、様々なパターンのプランに対応できる引き出しを増やしておく。
このように、長期的な視点で学習計画を立て、各時期でやるべきことを明確にすることが、合格への最短ルートとなります。まずは自分の生活スタイルに合わせて、いつ、何を、どれくらい勉強するのかを具体的に書き出してみることから始めましょう。
学科試験が終わると製図試験までは70日しかありません。時間を有効に使うことを心がけましょう。
2. 【学科試験編】科目別攻略法と効率的な学習術
4つの科目で構成される学科試験を効率的に突破するための具体的な勉強法を科目別に解説します。
2-1. 建築計画:暗記を効率化する学習法
「建築計画」は、二級建築士試験の学科Ⅰで出題される科目です。環境工学、建築史、各種建築物の計画、都市計画など、非常に広範囲から出題されるため、多くの受験生が膨大な暗記量に圧倒されてしまいます。
しかし、建築計画は学習方法を工夫すれば、安定した得点源にできる科目でもあります。ここでは、暗記を効率化し、着実に得点を伸ばすための学習法を解説します。
インプットとアウトプットを高速で繰り返す
暗記科目の学習で最も重要なのは、「インプット(知識を覚える)」と「アウトプット(問題を解く)」のサイクルをいかに早く、そして数多く回せるかです。
テキストを軽く読む(インプット)
まずはテキストの学習したい分野にざっと目を通し、全体像を把握します。この段階で完璧に覚えようと気負う必要はありません。「こういう内容が出題されるのか」と理解する程度で十分です。
すぐに過去問を解く(アウトプット)
テキストを読んだら、すぐに該当範囲の過去問題を解いてみましょう。最初はほとんど解けないかもしれませんが、問題ありません。大切なのは「どのような知識が、どのように問われるのか」を肌で感じることです。
間違えた問題の解説を読み、テキストに戻る
間違えた問題や、自信を持って答えられなかった問題の解説をじっくり読み込みます。そして、該当箇所のテキストに戻り、関連知識を含めて再度確認しましょう。この「なぜ間違えたのか?」を考えるプロセスが、知識をただの丸暗記ではなく、「使える知識」として定着させてくれます。
このサイクルを繰り返すことで、出題傾向や頻出のポイントが自然と頭に入り、効率的に学習を進めることができます。
分野を絞って集中学習する
建築計画の広大な出題範囲を一度にすべて覚えようとすると、挫折の原因になります。「環境工学」「建築史」「各種建築物」など、分野を絞って一つずつ完璧にしていく学習法が有効です。
特に、西洋建築史や日本建築史、あるいは身近な住宅計画など、自分が興味を持てる分野や得意な分野から始めると、学習のモチベーションを維持しやすくなります。まずは1つの分野で「過去問なら満点が取れる」という状態を作り、成功体験を積むことが、他の分野への学習意欲にも繋がります。
イメージと関連付けて記憶する
文字情報だけで覚えようとすると、記憶はなかなか定着しません。特に建築史や各種建築物の問題では、写真やイラスト、図面などを積極的に活用し、ビジュアル情報とセットで覚えるようにしましょう。
例えば、有名な建築家の名前とその代表作を覚える際には、必ずその建物の写真を見て、「この特徴的なデザインの建物を設計したのがこの人か」とイメージで結びつけることが重要です。また、日照や採光、換気といった環境工学の分野でも、簡単なイラストを描きながら理解すると、記憶に残りやすくなります。
スキマ時間を徹底的に活用する
暗記学習は、机に向かうまとまった時間だけでなく、通勤・通学中の電車内や休憩時間などの「スキマ時間」が非常に効果的です。
一問一答アプリの活用:スマートフォンアプリを使えば、手軽に知識の確認ができます。
自作の暗記カード:覚えにくい用語や数値をカードに書き出し、空き時間に見返す。
テキストの音読:周りに人がいない場所で、テキストの内容を声に出して読んでみる。
5分や10分といった短い時間でも、毎日繰り返すことで大きな力となります。建築計画は、こうした地道な努力が最も点数に反映されやすい科目です。自分に合った学習法を見つけ、戦略的に攻略していきましょう。
2-2. 建築法規:法令集を最強の武器にする方法
「建築法規」は、二級建築士試験の学科Ⅲで出題される科目です。この科目が他の科目と決定的に違うのは、試験会場に「法令集」を持ち込める点です。つまり、建築法規は知識を丸暗記する「暗記科目」ではなく、必要な条文をいかに速く、正確に探し出せるかを競う「検索科目」と言えます。
多くの受験生が苦手意識を持つ科目ですが、法令集を自分だけの「最強の武器」に育て上げることさえできれば、安定した得点源に変わります。ここでは、そのための具体的な方法を解説します。
試験前に勝負は決まる!法令集のカスタマイズ術
試験本番で法令集をスムーズに使いこなすためには、事前の準備、すなわち「カスタマイズ」が不可欠です。この作業に時間をかけること自体が、法令の理解を深める最高の学習になります。
インデックス(見出し)を貼る
市販の法令集には専用のインデックスが付属しています。まずはこれを丁寧に貼り、目的の法律や章に素早くアクセスできるようにしましょう。これは基本中の基本です。
線引き(アンダーライン)のルールを決める
過去問を解きながら、重要だと思った箇所に線を引いていきます。このとき、自分なりの「色分けルール」を決めるのがポイントです。たとえば、
- 赤色:定義、キーワード、重要語句
- 青色:数値(面積、高さ、距離など)
- 緑色:例外規定、ただし書きやかっこ書き
- オレンジ色:関連条文への参照指示
このようにルール化することで、条文を読む際の視認性が劇的に向上し、読み間違いや勘違いを防ぐことができます。
許可された範囲での書き込みを活用する
法令集への書き込みは、関連知識を繋げるための強力なツールです。
関連条文へのジャンプ:ある条文を読んでいるとき、関連する別の条文のページ番号を余白に書き込んでおきます(例:→P.350 )。これにより、複数の条文にまたがる問題を解く際に、思考を途切れさせることなくスムーズに情報を追うことができます。
「記憶」より「検索」を鍛えるトレーニング
法令集をカスタマイズしたら、次はそれを使いこなすためのトレーニングです。
問題を解くときは必ず法令集を引く
たとえ答えがわかっている問題でも、必ず法令集を開き、根拠となる条文を自分の目で確認する癖をつけましょう。「このキーワードだから、だいたいこの辺りにあるはずだ」という感覚を身体に覚え込ませることが重要です。記憶に頼って問題を解くのは絶対にやめましょう。
時間を計って引く練習をする
学習に慣れてきたら、1問あたりにかけられる時間を意識して、過去問演習に取り組みます。最初は時間がかかっても構いません。繰り返すうちに、法令集を引くスピードは着実に上がっていきます。本番で時間が足りなくなる事態を防ぐための最も効果的な訓練です。
目次と五十音索引を使いこなす
どうしても引くべき条文が見当もつかないときは、目次や巻末の五十音索引が頼りになります。普段から索引を使って引く練習をしておくと、未知の問題が出題されたときにも冷静に対処できます。
建築法規は、地道な準備とトレーニングが最も点数に直結する科目です。時間をかけて丁寧に育て上げた自分だけの法令集は、試験本番であなたを助けてくれる最高のパートナーとなるでしょう。
2-3. 建築構造:苦手な力学を克服するポイント
「建築構造」は、二級建築士試験の学科Ⅲで出題される科目です。特に「構造力学」の計算問題に苦手意識を持つ受験生は非常に多く、「構造で点数が伸びない…」と悩む声が後を絶ちません。
しかし、建築構造も正しいアプローチで学習すれば、決して乗り越えられない壁ではありません。むしろ、計算問題は一度解き方を理解すれば安定して得点できるため、得点源にすることも可能です。ここでは、多くの受験生がつまずく力学を克服し、建築構造を得意科目に変えるためのポイントを解説します。
力学のポイントは、力のつり合い
力学の学習で最も重要なのは、力のつり合いを考えることです。物体が静止するにはその物体に作用している力がつり合っている必要があります。このポイントをきちんと理解することによって、静定ばりや静定ラーメン、またトラスなどの問題が解けるようになります。言い替えると、力のつり合いが理解できなければ、その他の問題は解くことができません。
力の流れを「矢印」で図解する
単純梁や片持ち梁、ラーメン構造といった基本的な問題が出てきたら、必ず荷重、反力、応力(曲げモーメント、せん断力)を矢印で描く癖をつけましょう。最初はテキストの模倣で構いません。「ここに力がかかると、この部材はこう曲がろうとするから、こちら側に引張の力が働く」といった具合に、力の伝達をストーリーとして追うことで、公式が意味するものが見えてきます。
簡単な問題を完璧に解けるまで繰り返す
いきなり複雑な問題に挑戦する必要はありません。まずは最も基本的な例題を、何も見なくてもスラスラ解けるようになるまで何度も反復練習しましょう。この反復によって、力学的な「感覚」が身体に染みつき、少し難しい問題にも対応できる応用力が身につきます。
頻出の「解法パターン」をマスターする
二級建築士試験の力学問題は、実は出題されるパターンがある程度決まっています。全範囲を網羅的に理解しようとするのではなく、過去問で頻繁に問われる「解法パターン」を一つずつ確実にマスターしていくことが、合格への最短ルートです。
断面の計算(断面一次モーメント、断面二次モーメントなど)
トラスの計算(切断法、節点法)
座屈長さの計算
上記のような頻出テーマについて、「この問題が出たらこの手順で解く」という自分なりの解答プロセスを確立しましょう。解いた問題をテーマ別にノートに整理し、自分だけの「解法パターン集」を作成するのも非常に効果的です。間違えた問題は、なぜ間違えたのか(計算ミスか、公式の選択ミスかなど)を分析し、同じミスを繰り返さないための対策を書き込んでおきましょう。
文章問題は「構造種別で比較」して覚える
建築構造は力学だけでなく、木造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)といった各種構造法に関する文章問題も半分近くを占めます。これらは暗記が中心となりますが、やみくもに覚えるのは非効率です。
効果的なのは、それぞれの構造の特徴を「比較」しながら覚えることです。
| 比較項目 | 木造 | 鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄骨造(S造) |
|---|---|---|---|
| 耐力壁 | 筋かい、構造用合板 | 耐震壁 | ブレース |
| 接合部 | 仕口、継手、金物 | コンクリートと鉄筋の付着 | 高力ボルト、溶接 |
| 基礎 | 布基礎、べた基礎 | 独立基礎、べた基礎 | 独立基礎、べた基礎 |
このように、共通する項目(耐力壁、接合部、基礎など)で表にまとめ、それぞれの違いや共通点を整理することで、知識がバラバラにならず、体系的に頭に入ります。一つの構造法を覚える際に、「RC造ではこうだけど、S造ではどうだったかな?」と常に関連付けて学習することも学習のポイントの1つです。
建築構造は、力学の「理解」と文章問題の「整理・暗記」という2つの側面を持つ科目です。どちらか一方に偏ることなく、バランスよく学習を進めることが攻略の鍵です。苦手意識を捨て、一つずつ着実に積み重ねていきましょう。
2-4. 建築施工:現場イメージと結びつける記憶術
「建築施工」は、二級建築士試験の学科Ⅳで出題される科目です。仮設工事から始まり、土工事、躯体工事、仕上げ工事、そして改修工事に至るまで、建物が実際にどのように造られていくかを問う、非常に実践的な内容です。
出題範囲が広大で、専門用語や具体的な数値を覚えることも多いため、多くの受験生が「暗記が追いつかない…」と苦手意識を持っています。特に、現場での実務経験が少ない方にとっては、テキストの文字や図だけでは作業内容をイメージすることが難しく、学習が苦痛になりがちです。
しかし、建築施工は学習のコツさえ掴めば、安定した得点源に変わります。その最大のポイントは、個々の知識をバラバラに暗記するのではなく、「建物が完成するまでの一連のストーリー」として捉え、現場のイメージと結びつけることです。ここでは、そのための具体的な記憶術を解説します。
全体の流れを掴む!工事種別ごとのストーリー学習法
建築施工の学習で最も効果的なのは、知識を断片的に詰め込むのではなく、工事全体の流れという「縦糸」に、各工法の詳細という「横糸」を織り込んでいくように理解することです。
「なぜこの順番なのか?」を常に考える
まずは、「仮設工事 → 土工事・地業工事 → 基礎工事→躯体工事 → 仕上げ工事」という大きな工程の流れを頭に入れましょう。その上で、各工事の詳細を学ぶ際には、「なぜ鉄筋の配置には決まりがあるのか?」「なぜコンクリートは打設するまでの時間が決まっているのか?」といったように、その理由を自問自答する癖をつけます。この「なぜ?」を考えるプロセスが、単純な丸暗記を、理由に基づいた深い理解へと変えてくれます。
自分の言葉で工程を説明してみる
テキストを読んだら、一度閉じて、「鉄筋コンクリート造の躯体工事は、まず鉄筋を組み立てて、次にそれを囲うように型枠を建てて、そこにコンクリートを流し込んで…」というように、自分の言葉で一連の作業工程を説明してみましょう。うまく説明できない部分は、理解が曖昧な証拠です。その箇所を重点的にテキストで確認することで、知識の穴を効率的に埋めることができます。
「見たことがない」を克服する!動画と写真の活用術
実務経験のない方にとって最大の壁は、「現場イメージの欠如」です。これを補うためには、文字情報だけでなく、視覚情報を積極的に活用することが不可欠です。
YouTubeは最強の教材
現代では、建設会社や専門工事業者が、自社の技術を紹介するために施工動画をYouTubeなどで公開しています。例えば、「基礎配筋」「システム型枠」「外壁タイル張り」といったキーワードで検索すれば、プロの作業を無料で見ることができます。テキストに出てくる専門用語や機械・工具が、実際にどのように使われているのかを映像で確認すると、記憶への定着率が劇的に向上します。
工事現場を「生きたテキスト」にする
通勤・通学の途中や散歩の際に、街中の工事現場を意識して観察してみましょう。「あれがテキストで見た山留めか」「今は足場を組んでいる段階だな」といった発見があるはずです。現実の世界と学習内容がリンクしたとき、知識は忘れがたいものになります。
紛らわしい数値・用語は「セット」で整理する
建築施工には、鉄筋のかぶり厚さ、溶接の余盛、材料の保管方法など、混同しやすい数値や用語が数多く登場します。これらは、関連付けて整理することで効率的に覚えられます。
比較表で横断的に整理する
似て非なるものは、表にまとめて違いを明確にするのが鉄則です。例えば、「アスファルト防水」「シート防水」「塗膜防水」といった各種防水工事について、それぞれの特徴、長所・短所、主な施工箇所などを一覧表にしてみましょう。知識が体系的に整理され、記憶に残りやすくなります。
| 防水工事の種類 | 主な材料 | 特徴 | 主な適用箇所 |
|---|---|---|---|
| アスファルト防水 | アスファルト、ルーフィング類 | 信頼性が高いが、施工時に煙や臭気が発生。 | 陸屋根、地下外壁など |
| シート防水 | 塩化ビニル樹脂、合成ゴム | 下地の影響を受けにくく工期が短い。複雑な形状には不向き。 | 陸屋根など |
| 塗膜防水 | ウレタン樹脂、FRP | 複雑な形状にも対応可能。均一な厚さの確保が重要。 | バルコニー、屋上など |
イラストで覚える「かぶり厚さ」
鉄筋のかぶり厚さのように、部位によって数値が異なるものは、簡単な建物の断面図を描き、そこに数値を書き込んでいくと視覚的に覚えられます。「基礎の底盤は〇〇mm、土に接する柱は〇〇mm…」と、イラストとセットで記憶することで、数字の羅列を覚えるよりも遥かに楽になります。
建築施工は、一見すると無味乾燥な暗記科目に思えるかもしれません。しかし、一つ一つの知識が「良質な建物を安全に造るため」という目的に繋がっていることを理解すれば、学習はもっと面白くなるはずです。現場を想像する力を武器に、攻略していきましょう。
2-5. 過去問演習の重要性と効果的な使い方
これまで科目別の学習法を解説してきましたが、それら全ての学習成果を合格レベルに引き上げ、得点力を最大化するために不可欠なのが「過去問演習」です。二級建築士試験は、過去に出題された問題やその類題が繰り返し出題される傾向が非常に強い試験です。つまり、過去問は「最高の参考書」であり、その攻略なくして合格はありえません。
しかし、多くの受験生が「ただ問題を解いて、答え合わせをするだけ」という非常にもったいない使い方をしています。ここでは、過去問の効果を120%引き出し、合格を確実なものにするための戦略的な使い方を解説します。
なぜ過去問が「最強の教材」なのか?
まず、なぜ過去問演習がそれほどまでに重要なのかを理解しておきましょう。目的が明確になることで、演習の質が格段に上がります。
出題傾向と頻出分野がわかる:どの分野から、どのような形式で、どのレベルの知識が問われるのかを肌で感じることができます。これにより、学習の強弱をつけることができ、効率的な試験対策が可能になります。
知識が「使える」レベルになる:テキストを読んで「知っている」状態の知識と、問題を解ける「使える」状態の知識には大きな差があります。過去問演習は、インプットした知識をアウトプットする最高の訓練であり、記憶を定着させる最も効果的な方法です。
本試験の時間の感覚が身につく:試験本番では、限られた時間内に膨大な数の問題を処理しなければなりません。過去問を時間を計って解くことで、一問あたりにかけられる時間の感覚や、見直しの時間を確保するためのペース配分を身体に覚えさせることができます。
合否を分ける!過去問演習の3つの鉄則
過去問を単なる力試しで終わらせないために、以下の3つの鉄則を必ず守ってください。
鉄則1:「解く」のではなく「潰す」意識を持つ
最も重要な心構えです。正解したかどうかだけで一喜一憂するのはやめましょう。一問一問を徹底的に分析し、その問題から得られる知識を全て吸収し尽くす、「潰す」という意識が大切です。
正解の選択肢:なぜこれが正解なのか、根拠となるテキストの記述や法令集の条文を自分の言葉で説明できるようにします。
不正解の選択肢:なぜこれが誤りなのか、どこをどう直せば正しい記述になるのかを必ず確認します。ここにこそ、あなたの知識の穴を埋めるヒントが隠されています。
この作業を丁寧に行なうことで、1つの問題から4〜5倍の学習効果を得ることができます。正解した問題でも、他の選択肢の根拠が曖昧であれば、それはまだ完璧に「潰せていない」証拠です。
鉄則2:最低3周は繰り返し、目的を持って周回する
過去問は一度解いて終わりではありません。繰り返し解くことで知識は確実なものになります。その際、各周で目的意識を持つことが重要です。
1周目:実力チェックと全体像の把握
まずは時間を計らずに解いてみましょう。現時点での実力と、どの分野が苦手なのかを把握することが目的です。解けなくても全く気にする必要はありません。間違えた問題や自信のない問題にチェックを入れておきます。
2周目:弱点の克服と知識の定着
1周目でチェックした問題を中心に解き進めます。「なぜ間違えたのか」を徹底的に分析し、テキストや解説を読み込み、関連知識も含めて復習します。この段階で、知識の曖昧な部分を一つずつ潰していきます。
3周目以降:完璧を目指し、解答スピードを上げる
全ての選択肢の正誤を根拠を持って判断できる状態を目指します。この段階では、本番を想定して時間を計り、解答のスピードと正確性を高めるトレーニングを行ないましょう。9割以上を安定して正解できるようになれば、合格は目前です。
鉄則3:学習フェーズに合わせて解き方を変える
学習の進捗状況によって、過去問の解き方を変えるとさらに効果が上がります。
学習初期〜中期 → 「分野別」に解く
テキストでインプットした直後に、該当範囲の過去問を分野別にまとめて解きます。「環境工学」「RC造」「防水工事」といったテーマごとに集中して解くことで、知識が整理され、体系的に理解しやすくなります。
試験直前期 → 「年度別」に解く
試験の1〜2ヶ月前になったら、本番と同じ形式で1年分を通しで解く練習を始めましょう。これにより、科目間の頭の切り替えや、試験全体の時間配分といった、より実戦的な能力を鍛えることができます。
過去問演習は、地道で根気のいる作業です。しかし、ここでの努力の質と量が、そのまま本番の結果に直結します。一問一問と真摯に向き合い、自分だけの「合格データベース」を頭の中に構築していきましょう。
3. 【設計製図試験編】合格図面を描き切るための徹底対策
学科試験合格後に待ち受ける設計製図試験を突破するための、エスキスから作図完成までのノウハウを解説します。
3-1. 課題文の読解とエスキスの進め方
二級建築士の設計製図試験において、合否を分ける最も重要なプロセスが「エスキス」です。エスキスとは、課題文の要求を読み解き、設計の骨格となるプラン(平面図、立面図、断面図など)を固める作業を指します。ここで作成したプランが、最終的な図面の品質を決定づけるため、丁寧かつ効率的に進める必要があります。
本項では、合格レベルのエスキスを時間内にまとめるための具体的な手順と注意点を解説します。
ステップ1:課題文を制する者は試験を制す
エスキスは、課題文の読解から始まります。ここで要求条件を一つでも見落とすと、その時点で「課題要求を満たしていない」と判断され、合格は遠のきます。以下の手順で、課題文を徹底的に読み込みましょう。
マーキングによる条件整理
課題文を受け取ったら、まずは全体を読み通し、重要なキーワードにマーキングをしていきます。このとき、条件の種類によって色分けをすると、後から見返しやすくなります。自分なりのルールを決めておきましょう。
- 赤色: 絶対に守るべき条件(構造、階数、建ぺい率・容積率など)
- 青色: 面積に関する条件(延べ面積の範囲、各室の要求面積など)
- 緑色: 要求室や空間に関する条件(居間、寝室、屋外テラスなど)
- オレンジ色: 敷地条件や方位、外部との関係(駐車スペースの位置、隣地との関係、採光方向など)
要求事項の書き出し
マーキングした内容を、エスキス用紙の余白などに一覧表として書き出します。
「要求室」「要求面積」「動線や配置に関する特記事項」などを整理することで、頭の中がクリアになり、プランニングの指針が明確になります。この一手間が、後のプランニングをスムーズに進めるための鍵となります。
ステップ2:思考を形にするエスキスの進め方
課題文の要求を整理したら、いよいよプランニングに移ります。焦らず、論理的に思考を積み重ねていきましょう。
ゾーニング:大まかな配置を決める
いきなり部屋の配置を考えるのではなく、まずは敷地全体の中で、機能ごとに空間をグループ分けする「ゾーニング」から始めます。
- パブリックゾーン: 家族や来客が使うLDKなど
- プライベートゾーン: 寝室や子供室など、個人の空間
- サービスゾーン: 浴室、トイレ、キッチン、収納などの水回りや家事空間
これらのゾーンを、方位、道路との関係、生活動線(家族の動き)、家事動線(料理や洗濯の動き)を考慮しながら、大まかに配置していきます。例えば、「南側に明るいパブリックゾーンを配置し、サービスゾーンは家事動線が短くなるようにまとめる」といった方針を立てます。
コマプラン:面積と配置の具体化
ゾーニングで決めた方針に基づき、要求された各室を910mm角(半間)を1コマとしたグリッド(方眼)上に配置していきます。これを「コマプラン」と呼びます。
要求面積から必要なコマ数を算出し、パズルのように組み合わせていきます。この段階では、廊下や収納などの面積も忘れずに考慮に入れることが重要です。最初は完璧でなくても構いません。手を動かしながら、最適な組み合わせを探っていきましょう。
プランニング:間取りの確定
コマプランを元に、柱、壁、建具(ドアや窓)を具体的に描き込み、間取りを確定させます。以下の点に注意しながら、プランを練り上げます。
- 動線: 家族がスムーズに移動できるか。家具を置いた後の通路幅は十分か。
- 採光・通風: 各部屋に適切な光が入るか。風の通り道は確保されているか。
- 構造計画: 柱や耐力壁はバランス良く配置されているか。木造の場合、スパン(柱間の距離)は大きすぎないか。
エスキスで注意すべきポイント
時間配分を厳守する: 設計製図試験は5時間という長丁場ですが、時間配分が非常に重要です。エスキスに 1時間~1時間半 という目安を設け、時間を超えたら、たとえプランに不満があっても製図作業に移る決断が必要です。
「減点されない」図面を目指す: 独創的なデザインや複雑なプランは、ミスを誘発しやすくなります。課題文の要求をすべて満たし、法規違反や大きな欠陥がない「堅実なプラン」を目指すことが、合格への最も確実な道です。
迷いを断ち切る: 複数のプランで迷い始めると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。とりあえずたたき台のプランを作り、それをブラッシュアップしていくような感じでプランニングを行なってください。
エスキスは、単なる作図作業ではなく、課題文と対話し、設計者の思考を整理するクリエイティブなプロセスです。何度も練習を重ねて、自分なりの手順と時間配分を確立し、自信を持って本番に臨めるように準備しましょう。
3-2. 時間内に描き上げる作図スピードアップ術
渾身のエスキスが完成しても、それを時間内に図面として表現できなければ合格には至りません。設計製図試験の試験時間5時間のうち、エスキスに1時間半を費やした場合、残りの3時間半で平面図、立面図、矩計図(断面図)、面積表、計画の要点といった一連の図面をすべて描き上げる必要があります。
ここでは、限られた時間の中で合格レベルの図面を完成させるための、具体的な作図スピードアップ術を解説します。
1. 道具と環境を最適化する
作図スピードは、使い慣れた道具と最適な環境設定によって大きく左右されます。本番で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、普段から準備を怠らないようにしましょう。
シャープペンの使い分け: 線の太さや濃さを描き分けるために、複数のシャープペンを準備します。例えば、「下書き・寸法線用(0.5mm/H)」「構造線・外形線用(0.7mm/B)」「建具・家具用(0.5mm/HB)」のように、用途別に芯の太さや硬さを変えておくと、持ち替えるだけで線の強弱がつけられ、効率が格段に上がります。
製図板の事前準備: 試験開始前に、平行定規がスムーズに動くか、ガタつきはないかを確認し、ドラフティングテープで用紙を四隅にしっかりと固定します。用紙がずれると、すべての線が歪む原因となり、修正に多大な時間を要します。
テンプレートの活用: 円や四角、特に便器や洗面台などの衛生器具、家具などを描く際は、テンプレートを積極的に活用しましょう。手で描くよりも圧倒的に速く、正確な図形を描くことができます。
便器や洗面台などはテンプレートの四角と楕円などを組み合わせて記入します。便器の形をしたテンプレートを使用することは認められていません。
2. 作図手順を確立し、迷いをなくす
作図において最も時間をロスするのは、「次に何を描くか」と迷う時間です。自分なりの作図手順をルーティン化し、機械的に手を動かせる状態を目指しましょう。
水平線と垂直線をまとめて引く: 平行定規や三角定規を使い、なるべく多くの水平線を引き、次に垂直線をまとめて引きます。線を引くたびに定規を持ち替える無駄をなくし、リズム良く作業を進めることができます。
同じ部材は同時に描く: 「壁 → 柱 → 建具 → 家具」のように、描く対象を一つに絞り、すべての図面に対してその作業を完了させてから次に移ります。
文字や寸法は最後にまとめる: 図形をすべて描き終えてから、最後に文字入れや寸法記入を行います。作図の途中で文字を書き始めると、集中が途切れ、作業効率が落ちる原因になります。
3. メリハリのある線の描き方とフリーハンドの活用
図面は、すべての線を同じ調子で引いてはいけません。線の強弱にはルールがあります。また、見る人にとって見やすい図面となるよう、力の入れどころと抜きどころを意識しましょう。
線の強弱を意識する: 切断線(太線)、見えがかり線(中線)、寸法線(細線)など、線の種類を明確に描き分けることで、図面にメリハリが生まれ、読み取りやすくなります。これはスピードだけでなく、図面の質を向上させる重要なテクニックです。
フリーハンドを恐れない: 植栽や外構のタイル模様、人物や車といった添景は、フリーハンドで素早く描きましょう。完璧さを追求するあまり時間をかけすぎては本末転倒です。多少の歪みは気にせず、全体の雰囲気を伝えることを優先します。
4. タイムマネジメントを徹底する
普段の練習から、各図面にかける目標時間を設定し、時間を計りながら作図する習慣をつけましょう。
図面ごとの時間配分の例
- 1階平面図兼配置図:50分
- 2階平面図:40分
- 床伏図:35分
- 立面図:25分
- 矩計図:60分
- 面積表・計画の要点記入:10分
- 見直し・修正:10分
この時間配分はあくまで一例です。自分の得意・不得意に合わせて調整し、「この時間内に必ず終わらせる」という意識を持つことが重要です。
作図スピードは、才能ではなく「技術」です。正しい手順を学び、それを体に染み込ませるまで反復練習を重ねることで、誰でも必ず速く、正確に描けるようになります。一枚でも多くの図面を「完成させる」経験を積み、自信を持って本番に臨めるようにしましょう。
3-3. 減点を防ぐ!図面のセルフチェック術
渾身の力で図面を描き上げ、安堵のため息をつきたいところですが、合格を確実にするためには、ここからが最後の正念場です。どんなに素晴らしいプランでも、たった一つの致命的なミスが原因で不合格となるのが設計製図試験の厳しさです。
描き終えた達成感による油断は禁物です。残された時間を最大限に活用し、図面を客観的に見直す「セルフチェック」を行なうことで、うっかりミスを防ぎ、減点を最小限に抑えることができます。ここでは、合格を盤石にするためのセルフチェック術を解説します。
1. チェックリストで漏れを防ぐ
試験本番の緊張状態では、どこから手をつけて良いか分からなくなりがちです。普段から自分なりのチェックリストを作成し、それに沿って機械的に確認作業を進める習慣をつけましょう。チェックは、影響の大きい「致命的減点項目」から順に行なうのが鉄則です。
【最優先】一発アウト・重大減点項目
これらの項目に不備があると、その時点で合格が絶望的になります。まずはここから確認しましょう。
- 課題要求の充足:
- 要求室はすべて図面に盛り込まれているか?(エスキス時に書き出したリストと照合)
- 要求面積(延べ面積、各室面積)は範囲内に収まっているか?
- 駐車スペース、屋外テラス、スロープなど、指定された外部要素に漏れはないか?
- 「夫婦の寝室は南側に配置」といった特記事項は守られているか?
- 法規・構造の基本:
- 建ぺい率、容積率はオーバーしていないか?
- 高さ制限(斜線制限など)はクリアしているか?
- 階段の寸法(蹴上げ・踏面)は適切か?
- 耐力壁の配置(バランスなど)や量に問題はないか?構造的に無理はないか?
- 図面の不備や未完成:
- 面積表は完成しているか?
- 明らかに描きかけの部分(窓、建具、寸法線など)はないか?
【中優先】図面間の整合性
各図面が互いに矛盾していると、図面を読み解けないと判断され、大きな減点につながります。
- 平面図 ⇔ 立面図:
- 窓や出入口の位置、形状、大きさは一致しているか?
- 軒や庇の出、バルコニーの位置は整合性がとれているか?
- 平面図 ⇔ 断面図:
- 断面切断線の位置は正しいか?
- 切断した壁、建具、階段の位置は平面図と一致しているか?
- 室名は一致しているか?
- 立面図 ⇔ 断面図:
- 階高、軒高、天井高などの高さ関係は一致しているか?
- 屋根の形状や勾配に矛盾はないか?
【最終確認】図面の表現・完成度
図面の見やすさや丁寧さも評価の対象です。最後に全体のクオリティを高めましょう。
- 線種の使い分け: 切断線(太線)、見えがかり線(中線)、寸法線(細線)は描き分けられているか?
- 文字・寸法の記入漏れ: 方位、縮尺、図面名称は書かれているか?寸法線は主要な部分に入っているか?
- 図面の清掃: 不要な下書き線は消されているか?図面全体が汚れていないか?(消しゴムをかける際は、描いた線を消さないように注意)
2. 効率的なチェックのコツ
限られた時間で効果的にチェックを行なうには、少し工夫が必要です。
時間配分を決めておく: 試験終了前の10分~15分は、必ずチェックの時間として確保しましょう。
視点を変えて見る: 一度リラックスしてみたり、俯瞰した状態で図面全体を眺めたりすると、作図中に気づかなかったミスを発見しやすくなります。
一つの項目に絞ってチェックする: 「窓」と決めたら、1階平面図、2階平面図、立面図、断面図のすべての窓だけを追いかけるようにチェックします。こうすることで、注意が散漫になるのを防ぎ、見落としを減らせます。
セルフチェックは、ミスを探すための作業であると同時に、「自分の図面は課題要求をすべて満たした完璧なものである」と最終確認するための儀式でもあります。この一手間を惜しまないことが、合否の分かれ道となります。練習段階から必ずセルフチェックをルーティンに組み込み、万全の態勢で本番に臨みましょう。
4. 試験直前期から当日までの過ごし方
合格を確実にするための試験直前期の過ごし方、当日の心構え、そしてメンタルケアについて解説します。
4-1. 直前期の学習法と体調管理
試験本番まで残り1ヶ月を切ると、多くの受験生が焦りや不安を感じ始めます。しかし、この直前期の過ごし方こそが、合否を分ける重要な鍵となります。ここからは、知識を確実に得点力へと変えるための学習法と、万全の状態で本番を迎えるための体調管理について解説します。
学科試験の学習の軸は「反復」と「弱点克服」にシフト
直前期に最も避けるべきは、新しい参考書や問題集に手を出すことです。これまで使い込んできた教材を信じ、知識の定着と弱点の克服に集中しましょう。
問題の徹底的な反復演習
正解した問題よりも「なぜ間違えたのか」「なぜ迷ったのか」を徹底的に分析します。特に、繰り返し間違える問題は、あなたの弱点そのものです。解説を熟読し、関連するテキストのページに戻って知識を再確認する作業を丁寧に行いましょう。
法令集の引き方を最終確認
法規は時間との勝負です。インデックスの貼り方やマーキングを最終確認し、キーワードから瞬時に該当ページを開けるように、体に覚え込ませるトレーニングを繰り返します。本番と同じように時間を計りながら過去問を解くことが効果的です。
暗記項目の総ざらい
構造・施工科目の数値や、計画科目の建築史・建築作品名など、直前まで記憶が曖昧になりがちな項目は、移動時間や休憩時間などの隙間時間を活用して毎日少しずつでも目を通し、記憶に焼き付けましょう。自作のまとめノートや単語カードがここで活きてきます。
ベストパフォーマンスを引き出す体調管理術
どれだけ勉強を積み重ねても、試験当日に体調を崩しては元も子もありません。学習計画と同じくらい、体調管理にも細心の注意を払いましょう。
睡眠リズムを本番に合わせる
夜型の学習スタイルだった人も、試験の1〜2週間前からは朝型の生活に切り替え、試験開始時間に脳が最も活発に働くように調整します。質の良い睡眠を最低6〜7時間は確保し、日中の集中力を維持することが重要です。
バランスの取れた食事と適度な休憩
食事は脳のエネルギー源です。消化が良く、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。また、長時間の学習の合間には、軽いストレッチや散歩を取り入れ、心身をリフレッシュさせることも大切です。
メンタルの安定を保つ
直前期は誰もが不安になります。「完璧でなければ」と気負わず、「合格点を取ればいい」と割り切ることも時には必要です。これまで努力してきた自分を信じ、ポジティブな気持ちで本番に臨む準備をしましょう。
直前期は、学力だけでなく精神力も試される時期です。計画的に学習を進め、心身のコンディションを整えることで、合格はぐっと近づきます。万全の準備で、自信を持って試験当日を迎えましょう。
4-2. 試験当日の持ち物と時間配分の最終確認
直前期の努力を試験本番で最大限に発揮するためには、当日のシミュレーションと準備が不可欠です。学習面だけでなく、持ち物の準備や時間配分の最終戦略を立てておくことで、余計な不安や焦りをなくし、試験に集中することができます。ここでは、合格を盤石にするための最終確認事項を解説します。
「もしも」に備える持ち物チェックリスト
試験当日に「あれがない!」と慌てることがないよう、前日までに必ず持ち物を確認し、カバンに入れておきましょう。必須アイテムと、あると安心な便利アイテムをリストアップします。
- 【必須アイテム】
- 受験票: これがなければ受験できません。絶対に忘れないようにしましょう。
- 筆記用具: HB以上の鉛筆またはシャープペンシル、プラスチック消しゴムを複数用意します。万一の故障や落下に備え、予備があると安心です。
- 法令集(学科II「法規」用): 線引きやインデックスのルールを再度確認し、規定違反がないかチェックしておきましょう。使い慣れたものが一番です。
- 時計: 試験会場に時計がない、または見えにくい場合を想定し、必ず持参しましょう。スマートウォッチなどの通信機能付きのものは使用不可のため、シンプルな腕時計が基本です。
- 【あると安心なアイテム】
- 昼食・飲み物: 試験会場の周辺にコンビニや飲食店がない可能性も考慮し、持参するのが最も確実です。
- 羽織るもの: 会場の空調が自分に合わない場合に備え、カーディガンやパーカーなど、体温調節ができる服装を準備しておきましょう。
- まとめノート・参考書: 休憩時間に最終確認するための相棒です。ただし、新しい知識を詰め込むのではなく、これまで覚えたことの再確認にとどめ、自信をつけるために使いましょう。
- 常備薬: 頭痛薬や胃薬など、普段から飲み慣れている薬があると、いざという時に安心です。
合格を引き寄せる時間配分戦略
二級建築士の学科試験は、科目ごとに時間との戦いになります。事前に自分なりの時間配分を決め、本番で冷静に問題を解き進めるための戦略を立てておきましょう。
各大問にかける時間を決めておく
過去問演習を通じて、「この問題には何分かける」という時間感覚を体に染み込ませておきます。特に時間がかかりがちな法規や構造の計算問題で、1問に固執しすぎない「見切る勇気」も重要です。
解く順番をシミュレーションする
必ずしも問題番号順に解く必要はありません。「計画や施工などの暗記系科目から解き、勢いをつける」「得点源の科目から確実に押さえる」など、自分が最も落ち着いて実力を発揮できる解き方のパターンを決めておきましょう。
見直しの時間を必ず確保する
各科目、試験終了の10〜15分前には一通り解き終え、見直しとマークミス確認の時間を確保する計画が理想です。ケアレスミスによる失点は非常にもったいないため、解答欄のズレがないか、問題文の読み間違いがないかを冷静に確認しましょう。
試験当日は、これまでの努力を信じ、準備してきたことを淡々と実行するだけです。持ち物と時間配分の最終確認を怠らず、万全の態勢で本番に臨みましょう。


